BCAAとは分岐鎖アミノ酸の略で、具体的にはロイシン、イソロイシン、バリンの3種類を指します。
この3つの分岐鎖アミノ酸はヒトでは必須アミノ酸であり、筋タンパク質中の必須アミノ酸の35%を占める重要なものです。
通常は、肉や魚、大豆等のタンパク質源を食べれば摂取できますし、プロテインを飲んでも摂取できます。
今回は、BCAAの中でもイソロイシンについて、その特徴と働きをご説明したいと思います。
BCAAと糖代謝
BCAA投与が糖代謝機能に与える影響については様々な研究があり、結果が相反する研究も多くあります。
最近の知見では、BCAAを糖尿病マウスに経口摂取すると、血糖値が有意に減少することが解っています。
ただ、これだけではBCAAの何が血糖値に関係しているのかは、よく解りません。
そこで、ロイシン、イソロイシン、バリンのそれぞれが血糖値に与える影響を調べた研究が登場しました。
イソロイシンの血糖値低下作用
研究では、正常ラットのグルコース負荷試験で、イソロイシン(0.3g/kg 体重)をグルコース投与の30分前に投与するとグルコース投与に伴う血糖値の上昇をインスリン非依存的に抑制することが示された、とあります。
また、ロイシンは血糖値上昇抑制作用を示さず、バリンはイソロイシンとは対照的にグルコース投与30分後に血糖値を有意に上昇させた、とあります。
つまり、BCAAを摂取するよりもイソロイシン単独で摂取した方が、血糖値上昇の抑制作用は大きいということです。
このイソロイシンの作用は、インスリン非依存的(インスリンは分泌されない)であり、AMP/ATP経路でもなく(AMPKが活性する訳でもなく)行われます。
更に研究を進めると、イソロイシンは骨格筋へのグルコースの取り込みを促進し、取り込まれたグルコースはグリコーゲンとして蓄積されるのではなく、エネルギー源として利用され、筋肉中のエネルギー状態が改善されることが解りました。
これに対しロイシンは、取り込まれたグルコースを骨格筋グリコーゲンに合成する作用が大きいことが解りました。
つまり、イソロイシンによって取り込まれたグルコースは一部がエネルギーとして使われ、一部はロイシンによって筋グリコーゲンに合成され、とそれぞれ役割が違っていたということです。
イソロイシンは糖新生を抑制する
もう一つ、イソロイシン特有の作用として、肝臓において糖新生の律速酵素であるPEPCKとG6Paseの活性が低下しており、糖新生を抑制していました。
つまりイソロイシンは、骨格筋へのグルコース取り込みと全身の糖の酸化的利用を促進し、同時に肝臓における糖新生を抑制し、これらの作用が血糖値の低下に関係しているということです。
糖尿病患者というのは、インスリンの作用が低下し高血糖状態になり、それが更に肝臓での糖新生を亢進させ益々高血糖になる、という悪循環になっています。
イソロイシンは、この状態を緩和する可能性がある、ということです。
ただ、問題はBCAAというのは、巷でいくらでも手に入るのですが、イソロイシン単独では、なかなか入手しにくいという点です。
Amazonで検索すると、1個だけでてきます。
- Pure L-Isoleucine Powder (250 grams)
飲み方は論文によれば、食前30分前(0.3g/kg 体重)とあります。
(体重50kgの人で15g)
但し、これはラットでの研究なので人間に当てはまるかどうかは解りません。
まずは10g~15gの範囲で様子を見ながら試してみることをお勧めします。
血糖値の計測器をお持ちの方は測ってみると良いでしょう。一般的に「肉や魚などのタンパク質を食べた後で炭水化物を食べる。」と
言われていますが、あながち間違いでもないようです。